大学生時代に映画を見始めたきっかけは岩波映画だ。でも岩波ホールには行ったことがない。就職先でいえば日本興業銀行のようなもので雲の上の存在だった。その日本興業銀行もみずほ銀行となり、システムトラブルでたたかれている。
当時、岩波映画のブームが起きたのは、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品がきっかけだった。「ベニスに死す」の美少年ビョルン・アンドレセンに完全にやられた感があった。「家族の肖像」「ルートヴィヒ」に映る絵画や磁器陶器は美術の教科書に出てくる本物であり、ミラノ公侯爵家の一族であるヴィスコンティ監督個人の所有物だといわれた。
そのような映画を愛でる人々が集う岩波ホールに行くのははばかられ、もっぱら名画座に降りてくるのを待って鑑賞した。岩波映画ブームはフェリーニ、ベルイマンといったヨーロッパの芸術映画を観るきっかけになった。一度見てもまあちんぷんかんぷんな訳だが、その後西洋史の本を読んだ際など、映画の背景が理解できて興味深かった。
単純に興奮できるハリウッド映画とちがって、蘊蓄を傾ける必要があり嫌味なところがあるのだが、また一つの楽しみ方でもある。
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