資産家ながら賃貸住宅に住む投資家仲間で柳田氏(仮名)がいる。彼を見ていると人間万事塞翁が馬という諺が頭に浮かぶ。この人は実家が会社を営んでいたが、幼少期に倒産。親は離婚して離れ離れ、両親の間を行ったり来たり、また親戚に預けられたりしながら、高校を卒業後小さな工場で働きはじめた。
しかし劣悪な労働条件で風呂付アパートにも住めず、二代目が相続すると取巻きと遊び始めて、管轄外の仕事を押し付けられるようになって嫌になり退社。アルバイトをしながら資格勉強をして中小企業診断士と社会保険労務士に合格。私とは診断士受験の勉強仲間だ。資格学校の講師や税理士事務所に勤務したが、それらも薄給だったため株式投資をはじめて数億を稼いだ。
それを元手にコンサルタント事務所を開設した。事務所は社会保険労務士としての就業規則作成や給与計算の代行が収益のメインだ。しかしそれらの業務は主に奥さんが行っていて、彼の仕事のメインは株式投資と中小企業診断士としてのコンサルティングだ。私も会社員時代から副業として、コンサルティングをご一緒させていただいている。コンサルティングの仕事は私と彼が半々ぐらい受注してくる。
そんな彼は賃貸派で持ち家はキャッシュで買えるのに買わなかった。そして離散してしまった両親は合同墓地に埋葬しているので墓もない。自身も墓を作るつもりはなく。合同墓地に埋葬する生前手続きを済ませているようだ。
だから家じまいも墓じまいも無縁だ。
別の知人で坪川氏(仮名)は恵まれた人生スタートだった。父親は財閥系企業の役員で、本人も小学校から私立の付属校に通い、大卒後老舗のアパレル企業に就職した。育ちが良いので性格も穏やかで背が高くおしゃれで女性に人気があった。若いころ彼とはよく飲んだ。飲み会には会社で付き合っている彼女とその女友達をよく連れてきた。何回か別の彼女を連れてきたが、みんな品のある美人ばかりだった。女優にスカウトされた人もいた。彼女の友達に聞くと、いずれも女性の方から坪川氏にアプローチしたようだった。とにかく美人にもてる羨ましいやつだった。そして抜群の超美人と結婚して子供が一人できた。
ところが、彼はクモ膜下出血で半身不随となってしまった。その後両親も他界し生活のため夫人は働きにでた。木造アパートを相続していたため家賃収入もあったので、障害者年金との兼業大家だ。だが木造アパートの家賃や奥さんの収入は大したことがなく、老朽化したアパートや両親の家じまい墓じまいに悩んでいる。夫人の両親の介護も迫っている。
柳田氏の場合、人生の前半は恵まれなかった。しかしそのため、介護や家じまい墓じまいに煩わされることがなかった。不利な条件と思っていたのが一転した。人生は禍福糾える 縄の 如しだ。
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