著者は元プロレスラーだが、ステーキ店を創業して成功した。著名人が飲食店を開業して続いたためしがないが、この本を読むとその理由がよくわかる。
そして以下のような著者の創意工夫を見ると、商売人としての才能と努力がわかる。
・町内会から祭りに名前入り提灯を一つ出すことを求められた。すると10個出すことを申し出た。理由はどうせなら目立ちたいから。その結果町内会長から感謝され、町内会長がお客を連れてきてくれるようになった。
・客用駐車場スペースを数台分借りたが、そこにある電柱にたびたびぶつけられた。対策として電柱の前はつねに従業員の車を駐車させ、客が使わないようにした。
・隣の家の低いフェンスに客が腰掛けて苦情となった。低いフェンスのこちら側に腰掛けられないような高さのフェンスを立てた。
著者は安価な牛肉部位を手間をかけて加工することで付加価値をつけている。そこが核だが、様々な経営上の施策を自分の頭で考えて実行している。
プロレスラーでありながら、そのことを売りにせずに、肉の味という飲食店に最も重要な中身を磨いた。知名度に寄りかからなかった。
コロナ禍でも立地が悪かったために家賃が安く、緊急事態宣言の難を逃れた。立地の悪さが吉と出た形だ。人生万事塞翁が馬。
狂牛病騒動、リーマンショック、東北大震災、消費税増税、そしてコロナ禍。様々な困難を乗り越えている。応援したい経営者だ。