書評:「共犯者-編集者のたくらみ」芝田 暁著

2019年2月28日

著者は大月書店、徳間書店、幻冬舎編集長、編集部長を経て出版ベンチャースパイスを立ち上げた出版会のベテラン。しかし失敗して廃業。その後出版社勤務に戻っている。
梁石日のベストセラー「血と骨」の担当編集者でもある。

本書は書籍というコンテンツを作り上げるための、作家と編集者の人間臭い付き合い。そしてコンテンツをビジネスとして成立させるための様子が丁寧に描かれていて、実務者にしか書けない説得力のある作品になっている。文学に興味のある人、ビジネスに興味のある人双方におすすめの一冊だ。

「共犯者-編集者のたくらみ」主な内容

  • 梁石日との出会いとベストセラー「血と骨」出版
  • 梁石日作品の映画化
  • 出版ベンチャースパイスの創業から倒産まで

梁石日との出会いとベストセラー「血と骨」出版

梁石日は自分の人生をモデルとして小説を書いている。
ルビー・モレノというフィリピン人女優を一躍有名にした映画「月はどっちに出ている」の原作「タクシー狂操曲」は、大阪で事業に失敗した後タクシードライバーをしていた経歴をもとに書かれている。北野武主演で映画化された「血と骨」は梁石日の父親との物語だ。

そんな梁石日との出会いを語りながら、本書は梁石日と同じように事業の立ち上げと失敗を描いていく。

梁石日作品の映画化

大阪砲兵工廠の跡地から鉄屑を盗み出すアパッチ族といわれる在日朝鮮人を描いた「夜を賭けて」(後の参議院議員山本太郎主演)の映画化は製作費が足りなかった。

著者の勤務する幻冬舎は梁石日の自宅購入資金を融資し、作品の印税から回収していたという。ところが梁石日は、回収した残額の印税は映画の製作費として貸してしまったという。大阪で事業を失敗したときも、このような鷹揚すぎる金遣いだったのかもしれない。

出版ベンチャースパイスの創業から倒産まで

出版ベンチャースパイスでは、木戸次郎、宮崎学、森村誠一などの作品を出版している。森村誠一については「森村誠一の写真俳句のすすめ」がヒットする。そしてこの作品は書籍としてだけではなく、別のビジネスとして展開していく。はがきのフォトプリンターに写真俳句の機能を付けるというビジネスだ。また、NHKで写真俳句の番組もできている。

しかし結局大きなビジネスにはならず、資金繰りの厳しさから経営は悪化していく。

まとめと感想

出版社を立ち上げた際、4人の社員を雇いオフィスを借りている。売上の目途が立たないのに固定費が発生し、これが行き詰まりの原因になっている。

倒産した際最大の支援者は3千万円の債権を率先して放棄する。これによって他の債務者も債権放棄に追随した。付き合いのあった作家の宮崎学や森村誠一も現金を援助してくれている。

新聞でで十万部突破と広告していても、在庫を切らしたくない書店の要請で印刷しても、売れ残って返品されることがよくあるという。

出版ベンチャーの資金繰りの模様が興味深かった。出版社は作った本を取次(トーハンや日販)といった卸業者を経由して書店に本を並べてもらう。その取次からは半年後に〆てその翌月末に入金されるという。かなり厳しい決済条件だ。

資金繰りに頭がいっぱいで、クリエイティブな発想ができなくなるとも書かれている。
経営は資金繰りの重要さを学べる一冊ともなっている。

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